船勢洋子
「アーサナの秘義――師が確認された古の道――Raja Yoga」のクラス後半に設けられた質疑応答の中でシャーンティマイーさんに質問をさせていただきました。
船勢「仕事などで疲れている日とそうでない日でアーサナの内容にばらつきがあるのですが、その差をなくすためのアドバイスをもらえないでしょうか」
シャーンティマイーさん「一日の仕事などで疲れて、筋肉が強張ってしまっているというところですね。背骨が常に真っ直ぐ状態が保たれていればプラーナの通りも良く体は疲れないんだけれど、腰が落ちていたり猫背になったりしていることに気付かずに過ごしている、そういうことが夜に行なうアーサナに響いてくることは間違いないです。アーサナの時だけ背骨を真っ直ぐに立てるのではなくて、日常の姿勢のあり方、そこにもし直すべき点があれば目をやって、気付いたら腰を立てていく。そういう日々の中での訓練というのも併せて大事です。日常でも腰をしっかり起こしていくことで疲れない体になります。アーサナを2時間しているから自分は大丈夫とかではなく、あとの時間の方が大事です」
次の日から日常での姿勢のあり方を見直すように気を付けると、(私は立っている時間が多い仕事をしているのですが)立っている時にお腹の力が抜けて、気の抜けた姿勢になっていることに気付きました。そしてお腹にグッと力を入れると、自然と腰が起きて、背筋が伸び、胸が開きました。同時に、お腹の力が抜けている時は精神的な力も抜けていることに気付かされ、力を入れることで心理的にも力が満ちるのを感じました。それからは日常でお腹の力が抜けている瞬間にできるだけ気付くように心掛けて、気付いたら力を入れることで姿勢を正し、同時に心理的にも力を満たすようにしていきました。また座っている時も、しっかり腰を起こすように毎回意識しました。
続けていく中でしばらくは手応えがなかったのですが、4カ月ほど経った頃に変化が表れました。以前は特定の仕事をすると疲れていましたが、同じことをしても疲れなくなりました。例えば8時間労働だとしたら7時間くらいから疲れが溜まってきて、頭がボーっとしている状態で働いていることがよくありましたが、そうならなくなりました。以前は仕事がある日とない日でアーサナの柔軟さが全然違いましたが、その差が大分と減りました。そして膝の裏がしっかり伸びるようになり、幾つかのポーズ(パシュチモーッターナ、シャラバ、サマコーナ・アーサナ)で自然な集中が起こるようになり、自分から集中しようと努力しなくても、ポーズの形によって集中状態に導かれるような感触が芽生えました。ヨギさんのアーサナの奥深さに触れたように感じ、もっとアーサナに励んでいきたいとやる気を与えていただきました。
疲れなくなってから、いつの間にか仕事中の心の中の愚痴が随分と減りました。お腹に力が満ちていると心理的にも強い芯が育まれた感触があり、たとえ大変な場面に出会ったとしても、心は自然とそれを受け止め、必要なことを淡々と行なっていきます。今まで疲れていたのは仕事内容のせいではなく、自分が気の緩んだ心境で仕事と向き合っていた結果、状況にのみ込まれていたんだと気付かされました。そしてこのことが気にならなくなるまで、実践を続けていこうと胸に誓いました。

最後に、シャーンティマイーさんは質疑応答の時、どんな質問に対してもはっきり的確に答えながらも、質問者その人のタイミングやペースをとても尊重した伝え方をされていました。その態度に、いつもいつも私たちの表面ではなく本質だけを見てくださり、私たちがどんな渦中にいても真実に向けて大きく舵を切ってくださった、ヨギさんを思い出しました。そして私が本当に強く憧れるのはそこなのだと思いました。ヨギさんが残してくださったかけがえのない本物のヨーガが、この世界にいつまでも正しく伝承されていきますように、私自身も弟子の一人として、全力でヨーガに励んでいきたいです。